【トマトの実が穴だらけ?】家庭菜園で注意したい「オオタバコガ」の被害とやさしい対策ガイド

はじめに:いろはに農園での発見
ある夏の朝。
いろはに農園のトマトに目を向けると、赤く色づき始めた実に小さな穴が…。手に取ってみると、中には小さな緑色の幼虫が潜んでいました。
「これ、何の虫…?」と調べてみると、それは「オオタバコガ(大煙草蛾)」という害虫でした。
トマト栽培では毎年元気に育っていたので、はじめはとても驚きました。
この記事では、オオタバコガの特徴・被害の様子・わたしたちが実践した対策を詳しくご紹介いたします。
オオタバコガとは?家庭菜園にもやってくる要注意害虫
オオタバコガの基本情報
オオタバコガ(英名:Tobacco budworm)は、**夜行性のガ(蛾)**の仲間です。日本では本州以南の温暖な地域に生息し、夏から秋にかけて活動が活発になります。
- 成虫の体長:約20〜25mm。茶色がかった羽をもち、葉裏などに卵を産みつけます。
- 幼虫の体長:最大で約40mmほどに成長。緑、茶、褐色など色の個体差があります。
- 卵の形:直径0.5mmほどの白〜黄みがかった球形で、葉やつぼみに産みつけられます。
なぜトマトが狙われやすいの?
オオタバコガの幼虫は、ナス科の植物を好む傾向があり、とくにトマト・ナス・ピーマン・トウガラシ類などの実を食害します。
トマトは柔らかくて甘みがあり、熟す過程で香りも強まるため、幼虫の成長に適しているようです。さらに、果実の中に潜り込む習性があるため、外からは見つけにくく、気づいたときには深刻な被害になっていることもあります。
被害の特徴:実が腐る、穴があく、収穫が減る…
実への被害



オオタバコガの幼虫がトマトの実に侵入すると、以下のような症状が現れます。
- 小さな穴(直径5mm前後)と、その周囲の黒い糞
- 果実が腐敗して中身がドロドロに
- 熟す前に実がぽとりと落ちてしまう
また、穴から雨水や細菌が入ることで実が割れる・腐るといった二次被害も起こりやすくなります。
葉や花への被害


トマトの新芽や花房に産みつけられた卵がふ化すると、幼虫が花や葉を食べてしまい、受粉や実つきにも影響が出ます。
被害拡大を防ぐには?家庭菜園でできる予防と対策
いろはに農園では、「やさしく、でも確実に」防除を進めていきたいという思いから、いくつかの方法を試してきました。ここでは効果の高かった対策をご紹介します。
剪定による被害枝の除去と更新
被害が広がった場合は「思い切った剪定」
トマトの実や枝に明らかな被害が見られたら、早めに剪定して取り除くことが最優先です。中に潜んだ幼虫は農薬が届きにくく、時間が経つほど被害が拡大します。
- 穴のあいた実、食害された花房
- フンのついた枝
- 葉の一部がかじられている部分
これらを剪定して除去し、**健康な枝や脇芽を残して育て直す「更新剪定」**を行いました。


剪定のときは、少し心が痛みますが、思い切ってカットすることが大切です。
ためらわずにしっかり剪定してあげることで、株がすっきりと風通しよくなり、オオタバコガの隠れ場所も減らせますよ。
作業のあとは、切った茎や葉はそのままにせず、必ず袋に入れてしっかり処分してくださいね。
放置してしまうと、残った茎にオオタバコガの卵や幼虫が潜んでいることがあり、再発の原因になってしまうこともあります。
少し勇気のいる作業かもしれませんが、植物の健康を守るためにも「丁寧に・しっかり・思い切って」が大切です🍀
剪定のポイント
- 晴れた日の朝に行う(切り口が乾きやすく病気になりにくい)
- 剪定ばさみはアルコールなどで消毒してから使用
- 切り取った枝・実は必ず袋に密封して処分
やさお酢の定期散布
やさお酢とは?
「アースガーデン やさお酢」は、100%食品由来の酢を使った防除資材で、収穫直前まで安心して使用できるのが魅力です。
効果のポイント
- 幼虫・卵に対する忌避効果
- 散布後の表面に膜ができ、虫の侵入を防ぐ
- アブラムシやコナジラミなどにも効果あり
散布方法
- 2〜3日に1回、葉の表・裏両面にスプレー
- 特に花房や若い実の周りを重点的に
- 雨の後は再度散布
フェロモントラップと物理的対策
夜に活動する成虫対策に
オオタバコガの成虫は夜行性で、夜間に葉裏や花房に卵を産みつけます。そこで効果的だったのが「フェロモントラップ」の設置です。
- 誘引剤の匂いで成虫のオスを誘い、交尾を妨げる
- 飛来のピーク(6月〜9月)に設置することで被害を軽減
- 農薬を使わずに数を抑えることができる
さらに、防虫ネット(目合い1mm程度)で物理的にトマトの周囲を囲うのも有効です。
BT剤(バチルス・チューリンゲンシス剤)
BT剤は、天然由来の細菌を使った生物農薬で、若齢の幼虫に対して高い殺虫効果があります。
特徴
- トマトやナスなど多くの野菜で使用可能(エスマルクDFなど)
- 薬剤抵抗性が出にくい
- 食べた幼虫の消化器官に作用し、やがて死滅
散布時の注意
- 幼虫が小さいうち(ふ化直後)に散布すること
- 2週間おきの定期散布で予防効果が高まる
- 雨に流されやすいので天候にも注意
日々の観察が何よりの防除策
被害を未然に防ぐには、毎日の観察と早めの対応がなにより大切です。
- 葉や実に穴がないか、黒い糞が落ちていないか
- 花の中に潜んでいないか
- 実の表面に光沢がなくなっていないか
少しの変化にも気づいてあげることで、被害を最小限に抑えることができます。
トマトを元気に育てるためのポイント
✔️ 風通しをよくする
→ 葉の密集を避けて、湿気や虫の隠れ場を減らす
トマトは元気に育つと葉がよく茂りますが、過剰に茂ると通気性が悪くなり、病害虫の温床になりやすくなります。特にオオタバコガは葉の裏や茂みの奥に卵を産みつける性質があるため、風通しの良さはとても大切です。
🌿 具体的な工夫
- **脇芽かき(芽かき)**をこまめに行い、一本立ちや二本仕立てに整える
- 実がついていない下葉(地面に近い葉)は早めに切除することで、風が通りやすくなる
- 1株ごとの間隔を40〜50cm以上空けて定植するのが理想的(次回以降の参考に)
風が通れば、土も乾きやすくなり、うどんこ病などの発生リスクも下がります。
✔️ 肥料は控えめに与える
→ 肥料過多で葉がやわらかくなると、虫が好む環境に
トマトは元々、やや痩せた土地を好む野菜です。特に窒素(チッソ)成分が多すぎると、葉が茂りすぎてしまい、「青くさくやわらかい葉」がたくさんできてしまいます。これは虫にとってごちそうのような状態で、オオタバコガを含む多くの害虫のターゲットになりやすくなります。
🍂 適切な肥料の与え方
- 元肥は控えめにし、実がつき始めてから追肥で補うのが理想的です
- 肥料の間隔は2〜3週間に1回程度(液肥やボカシ肥なら少量ずつ)
- 葉が濃い緑で大きく、茎が徒長している場合は肥料過多のサイン
過剰な肥料を避けることで、虫の付きにくい締まった株になり、花付き・実付きも良くなります。
✔️ 雑草をこまめに取る
→ 卵の産卵場所や幼虫の隠れ場を減らす
雑草はトマトに直接関係ないように見えて、実はオオタバコガやアブラムシ、アザミウマなどの害虫の住みかや繁殖場所となることがあります。中には雑草に産卵された卵からふ化した幼虫が、すぐそばのトマトに移ってくることも。
🌾 雑草管理のコツ
- 畝の周囲や株元は週1回程度こまめに除草
- 雨の翌日(根がゆるんでいる日)に抜くと作業がしやすい
- 雑草の抑制には、敷きワラ・マルチ・落ち葉マルチも有効です
- 草を刈ったあとも、放置せずに堆肥場や袋にまとめて処理
「虫が隠れる場所を作らない」ことが、自然な防除につながります。
オオタバコガ対策に加えて、トマトを健やかに育てる環境づくりも重要です。

おわりに:家庭菜園ならではのやさしい害虫対策を
いろはに農園では、「できるだけ農薬を使わず、娘と一緒に安心して食べられる野菜を育てたい」という思いで、虫たちとも向き合ってきました。
オオタバコガは厄介な相手ではありますが、早期発見・剪定・自然資材の活用・毎日の観察を続けていけば、必ず落ち着いてきます。
今年の経験を通じて、わたしたちも一歩成長できた気がします。
同じような悩みを持つ方の参考になればうれしいです🍅🌿